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Immunotherapy

舌下免疫療法

~お子さんのアレルギー性鼻炎を
治してあげたいご家族へ朗報です~

体質を改善する
アレルギー性鼻炎の
新しい治療
『舌下免疫療法』

 アレルギー性鼻炎は、
くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった
つらい鼻の症状だけでなく、
ひどくなると集中力が低下するなど
日常生活に支障をきたしたり、
ぜんそくなど他のアレルギー性疾患を
併発することも考えられます。

photo「アレルギー性鼻炎は日本人の国民病」とも言えるほど、多くの方々がその症状に悩まれていますが、最近では小さなお子さんがつらい日々を送っていることも少なくありません。
お子さんのアレルギー性鼻炎は、本人もご家族も気づいてないことがあり、知らずに集中力の低下による学習効果の低下を招いたり、
成長に大切な睡眠の質を下げたりすることから、お子さんの心身の発達への影響は大きいと感じます。

ですから、アレルギー性鼻炎が治るとお子さんの人生が変わると言っても過言ではないとさえ思うのです。

主なアレルギー性鼻炎の治療

  1. くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状をやわらげたり抑えたりする服用薬、点眼薬、点鼻薬を使った【薬物治療(対症療法)】
  2. アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつ患者さんの体内に入れて、ご本人の体質そのものの改善を期待する【免疫療法】

2つの療法のうち、根本からアレルギー性鼻炎を治すことができる可能性のある治療法が2の【免疫療法】です。
ダニ(ハウスダスト)やスギ花粉に過剰に反応する体質が改善できれば、お子さんはアレルギー性鼻炎のつらい症状から解放されるのです。

夜の寝苦しさから解放してあげたい……

何十年もこの症状と付き合っていくのはかわいそう……

受験を迎える年齢までにつらい症状を治してあげたい……

多くのお母さん、お父さんが
この『舌下免疫療法』による
治療を選択されています。

 体質改善を目的とする免疫療法としては、以前から、アレルゲンのエキスを注射で体内に入れる「皮下免疫療法」がありましたが、治療開始直後は頻回に通院が必要なうえ、長期間にわたって定期的に注射を行わなければならず、お子さんならずとも少なからず苦痛が伴うもので、日本では一般的な治療法とはなりませんでした。

 ところが、スギ花粉に対するアレルギーでは2014年、ダニ(ハウスダスト)に対するアレルギーでは2015年から、皮下免疫療法の欠点を改善した『舌下免疫療法』が健康保険を使って行えるようになりました。
 基本的に通院は月1回、後は自宅で毎日溶けやすい錠剤(無味無臭)を舌の下に1分間留め置き、そのあと飲み込むだけで、体質改善が期待できる画期的な治療法です。舌の下に置いたアレルゲンのエキスでできたお薬は溶けて吸収され、徐々に体をアレルゲンに慣らしていきます。

 2018年2月からは、お子さんに対する治療も認められましたので、錠剤を1分間飲み込まずに舌の下に留め置ける年齢(5歳ごろが目安)のお子さんから、治療の選択肢の一つとしてお考えいただけます。
 また、大人よりお子さんのほうが体が慣れやすい、つまり、治療による効果が得られやすいということも分かっています。長い一生を考えるとお子さんにこそ選択してあげてほしい治療法と思います。

まずは、アレルギーの原因を突き止めましょう!

 治療を始める前に、問診と抗原検査により鼻炎を起こしている原因であるアレルゲンを特定することが欠かせません。

うさぎ
問診

まず問診で、症状の出る時期やその程度、他のアレルギーの病気があるかなどをお聞きし、今の症状はアレルギー性鼻炎なのか、それともほかの病気なのかを診断します。

抗体検査

 さらに、採血をして血清抗体検査を行い、アレルギーの原因であるアレルゲンを突き止めます。ダニ(ハウスダスト)あるいはスギ花粉がアレルゲンと分かれば、『舌下免疫療法』を治療として選択することができます。

※舌下免疫療法は、体質改善を目的とする治療法です。ですから、始めたからと言ってすぐに効果が表れる治療法ではありません。当初は対症療法である薬物療法も併せて治療を進め、状態を見ながら徐々に薬物療法を減らしていきます。

  • ダニ(ハウスダスト)やスギ花粉以外のアレルゲンがある場合は、それが原因で症状が残ってしまう場合もあります。
  • 重度の気管支ぜんそくを併発しているお子さんなど、舌下免疫療法が行えない場合もあります。

舌下免疫療法ってどんな治療をするの?

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  • 毎日1回、少量の治療薬から始め2週間かけて徐々に増量し、その後定められた一定量を長期間(3年以上)継続して使用します。
  • 治療を開始する前に、お子さん一人ひとりに対する舌下免疫療法の効果があるかないかの判断はできません。治療開始後約2年経過したら、治療の効果について検査を行い、効果が確認できたお子さんには治療を継続していただきます。
  • 約8割のお子さんに効果が認められる反面、約2割のお子さんには効果が少ない、あるいは効果が認められないというデータがあります。
  • 舌下錠の使用は、ダニ(ハウスダスト)の場合はもちろん、スギ花粉の場合でも1年を通して毎日続ける必要があります。途中で止めてしまうと効果が得られないので、頑張って最低でも3年は続けましょう。
  • 初めての舌下錠の服用は、クリニックで指導と観察を受けながら行います。ご家庭でもできるよう十分に指導しますのでご安心ください。その後30分くらいお待ちいただき、重度のアレルギー反応が出ていないかを確認してからの帰宅となります。問題がなければ、2日目からは自宅で決まった時間に舌下錠を使用します。
  • 使用後5分間はうがいや飲食はできません。また、直後の激しい運動や入浴は避けるようにします。
  • 当初1か月くらいは1~2週間に1度通院し、様子を確認します。その後は1か月分のお薬を処方いたしますので、お薬の効果やお子さんの安全の確認のために月1回の通院をお願いします。

※現在、新コロナウイルス感染症に関する暫定措置としてオンラインによる診療が、舌下免疫療法でも認められています(初診は採血検査があるので来院のみとなります)。いつまでオンラインで行えるかは未定ですが、すでに治療を開始されている方がコロナ感染を心配されて治療を中断されてしまうことのないよう、お電話いただければと思います。

舌下免疫療法にかかる費用は?

 3割負担の方で舌下免疫療法にかかる費用は、診療費を除いて、ダニ(ハウスダスト)が月に約2,800円、スギ花粉が月に約1,500円です。また、治療開始当初、症状を抑えるお薬も併用する場合は、そのお薬代もかかります。ただし、お子さんの場合は、区や市町村の小児医療費助成制度により、お住まいの地域により費用が異なります。

堺市内にお住まいで「子ども医療証」のご提示のある場合
舌下免疫療法 3割負担の方
※診療費および併用薬代(必要な方のみ)は除きます。
対象 1日あたり
・ダニ(ハウスダスト)
・スギ花粉
500円(500円に満たない場合はその額)
※1ヶ月あたり最大2日分。それ以後は風邪などほかの病気で通院しても無料

 当院のある大阪府堺市では「子ども医療証」の交付を受けておくことで、健康保険証と医療証を当院の窓口に提示していただければ、ご負担いただくのは、1医療機関、1日500円(500円に満たない場合はその額)、月に2日分で、それ以後は無料です。
つまり、もし風邪などほかの病気に罹って何度通院していただいても、毎月1,000円の負担で治療を続けていただけることになります。

舌下免疫療法の開始時期

ダニの舌下免疫療法…梅雨時と秋口以外からの開始がおすすめ

基本的には、体調の悪いときでなければ年中いつでも開始できます。ですが、ほとんどのお子さんは、ダニの増殖期の梅雨時や気温が下がってダニが一斉に死滅して大量の死がいが発生する秋口に症状が悪化し、アレルギー症状がひどくなります。そこで、症状の悪化を誘発しないためにもその時期は避けたほうが無難と思います。

スギ花粉の舌下免疫療法…6月から10月末までの開始がおすすめ

安全性確保(多くのアレルゲンが一度に体の中に入るのを防ぐ)のため、スギ花粉症のシーズンが終わった6月から12月までの開始が定められていますが、
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QRコード ▽スギ花粉の飛散に関する情報がメールに届くサービス
https://alg-torii.jp/ (別ウィンドウが開きます)
※ こちらは鳥居薬品さんのサービスですが、登録して頂くことで、スギ花粉の舌下免疫療法の開始時期目安となる、飛散終息時期予測などをメールで受け取っていただけます。
(スマホでメールを受け取りたい方はQRコードを読み取っていただくと便利です)

舌下免疫療法の効果

 舌下免疫療法は、アレルゲンに対する免疫反応そのものを改善する、つまりご本人の体質を改善する治療法なので、残念ながら治療を受けたすべてのお子さんが完全に治るというわけではありません。体質は一人ひとり違うので、完全に治ってしまうお子さんがいらっしゃる一方、効果が得られないお子さんもいらっしゃいます。

 多くの場合、完全に治らなくても、症状を抑えるお薬の量を減らすことができたり、スギ花粉症では、お薬を飲む期間を短縮することができたりします。

 当院でも、治療をされて「すごく楽。今まで何だったんだろう!」というお声を、しばしばいただきます。お子さんご本人も親御さんも鼻炎の症状に慣れてしまって、本来あるべき正常な状態を忘れてしまっている場合さえあるのです。こういうお子さんに接したとき、舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎のお子さんの人生を変えるのではないかと心の底から思います。

舌下免疫療法は現時点ではあくまで鼻炎の治療薬ではありますが、副次的な効果として、眼の症状や皮膚のかゆみ、ぜんそくなど、他のアレルギー症状が改善される方もおられます。
さらに、舌下免疫療法を受けている、もしくは治療を終えられているお子さんは、免疫の過剰な反応が抑えられるので、治療を受けていないお子さんに比べて、以後、新たな別のアレルゲンに対してアレルギー反応を生じることが少なくなることも分かっています。

舌下免疫療法の終了

舌下免疫療法は3~5年間、最低でも3年は治療の継続が推奨されています。

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 数年間の治療を行ってアレルギー症状が完全に消えたり、症状が軽くなるなど一定の効果が得られたら、いったん治療を終了します。治療を終了しても、将来的にまた症状が出ることも考えられますが、その場合は、また舌下免疫療法を再開すると、短期間ですぐに効果が得られることも分かっています。

 また、途中で治療を止めてしまったけれど、やっぱりもう一度治療を始めたいという場合には、まず少量から始めて徐々に増量する1からの出発になってしまいます。治療の中断や終了は、ご自分で判断なさらないで医師にご相談ください。

舌下免疫療法を受けられないお子さん

次のようなお子さんは舌下免疫療法が受けられません。

  1. スギ花粉やダニ(ハウスダスト)がアレルゲンでないお子さん
  2. スギ花粉やダニ(ハウスダスト)だけではなく、他のアレルギー原因物質に対して強いアレルギー反応をお持ちのお子さん
  3. 重度のぜんそくを合併しているお子さん
  4. 重度のアトピー性皮膚炎のあるお子さん
  5. 自己免疫疾患や免疫不全症などのお子さん
  6. 本剤の投与でショックを起こしたことのあるお子さん
  7. ステロイド薬(点鼻薬・点眼薬・吸入薬・軟膏は除く)や免疫抑制剤を使用しているお子さん
  8. その他、医師が不適当と判定したお子さん

舌下免疫療法の副作用

 ダニ(ハウスダスト)やスギ花粉にアレルギーをお持ちのお子さんに、そのエキス自体を使用しますので、当然のことながらアレルギー反応が起きる可能性があります。重篤な場合には、アナフィラキシーショック(ハチに刺されたときやソバを食べたときなどが有名です)とよばれる強いアレルギー反応を生じることが絶対に起きないとは言い切れません。

 とはいえ、これまでの国内外での実績では、舌下免疫療法にともなう重篤な副反応はきわめて稀であり、様々な他の治療法に比べてもかなり安全なことが分かっています。海外でのデータですが、舌下免疫療法によるアナフィラキシーショックは投与100,000,000回に1回とのことですし、舌下免疫療法の副作用に伴う死亡例の報告はありません。

軽度の副作用には次のようなものが報告されています。

  1. 口内、口唇のかゆみや浮腫、感覚の異常
  2. 腹部症状(おう吐、腹痛、下痢など)
  3. じんましん
  4. ぜんそく発作
  5. その他(耳のかゆみ、喉の炎症や違和感、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、目のかゆみ、咳など鼻炎症状の悪化)
  • 舌下錠が直接触れる口腔内には副反応が出現することがありますが、症状は軽く、その多くが治療を必要としません。
  • 副反応の多くは薬の増量期に起こることが多く、体が慣れてくると症状は消失します。
  • 舌下免疫療法の中断や投与量の変更を必要とするような副作用のほとんどは、ぜんそく発作や消化器症状です。
  • 初回の使用は必ず医院内で行い、副作用の観察のために使用後30分程度、クリニック内で様子を見ますのでご安心ください。
  • そのほか、体調でご心配なことがあれば、いつでもご相談ください。

複数のアレルゲンを持つお子さんへ

 日本で舌下免疫療法が認められているのは、
現在2種類、ダニ(ハウスダスト)とスギ花粉で、
アレルゲンを直接体内に入れる治療ですから、
当然、それ以外のアレルギーには効果はありません。

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 ですから、複数のアレルギーをお持ちのお子さんの場合、治療によってダニ(ハウスダスト)やスギ花粉に対するアレルギー反応が緩和されても、そのほかのアレルギーによるひどい症状があれば、結局はラクにならないということになってしまいます。
したがって、ダニ(ハウスダスト)やスギ花粉以外の物質に強いアレルギーをお持ちのお子さんにはあまりお勧めしていません。

 もちろん、複数のアレルゲンをお持ちであっても、ダニ(ハウスダスト)やスギ花粉に対するアレルギーだけでも軽症になれば、日常生活上大きなメリットがあるという場合に使用することは可能です。例えば、スギ花粉の季節だけ特に症状が悪化するお子さんなどです。

 そのような観点からも、
血液検査でアレルゲンを
調べる必要があります。
血液検査では、どんな物質に対してどれくらい強いアレルギーがあるかが分かるので、その結果を見て個別に相談させていただいています。
なおまた、ダニ(ハウスダスト)とスギ花粉の両方にアレルギーを持つお子さんの場合、現時点ではダニ(ハウスダスト)とスギ花粉に対する治療薬を2種類同時に開始することは認められていません。

 いずれかの治療を開始してから状態が安定してくれば次を始めることになります。個人的な考えとしては、スギ花粉は1年の2~3か月、ダニ(ハウスダスト)は1年を通してなので、ダニ(ハウスダスト)に対する治療の効果が大きいと感じますが、スギ花粉のほうに強い反応を示しているお子さんなら、スギ花粉が先ということもあり得ます。治療の進め方についてはお子さんの状態に合わせて個別にご提案させていただきます。