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はじめに
日本脳炎ワクチンは定期接種(無料)のワクチンです。
これまでぐんぐん両院では、接種推奨時期を3歳としてきましたが、この度、接種開始を前倒しすることを推奨することにしました。
そこで「そもそも日本脳炎とはどんな病気なのか」そして、「なぜ今前倒しを推奨するのか」について解説してみたいと思います。
日本脳炎ってどんな病気?
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、蚊を介して感染します。
実は日本脳炎ウイルスは豚に感染するウイルスですが、ブタは感染しても無症状です(増幅動物といいます)。
その感染したブタの血を、蚊が吸って、その蚊が次に人間を刺すと感染することがあります。
突然の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもあります。
一般に、日本脳炎ウイルスに感染した場合、およそ1000人に1人が日本脳炎を発症し、発症した方の20~40%が亡くなってしまうといわれています。また、生存者の45~70%に精神障害などの後遺症が残ってしまうといわれています。
世界的には年間3~4万人の日本脳炎患者の報告がありますが、日本と韓国はワクチンの定期接種によりすでに流行が阻止されています。
日本では、1966年の2,017人をピークに減少し、1992年以降発生数は毎年10人以下です。
この結果からもワクチンが非常に有効な疾患と言えます。
予防接種について
まずは定期接種としての「一般的なスケジュール」をお示ししましょう
- 1期接種:初回接種については3歳~4歳の期間に6~28日までの間隔をおいて2回接種
- 1期追加接種:2回目の接種を行ってから概ね1年を経過した時期1回の接種
- 2期接種:9歳~10歳までの期間に1回の接種
スタートは標準的には3歳とされていますが、法律的に生後6ヶ月からも定期接種として接種することが可能なワクチンです。
なぜ接種を前倒しした方が良いのか
実は、日本小児科学会では2016年に、日本脳炎の前倒しに関する推奨を出しています↓
その冒頭の文章で、「毎年各都道府県で実施されているブタの抗体保有状況をみると日本脳炎ウイルスは西日本を中心に広い地域で確認されています。」という説明がなされています。
前の項目で、「日本脳炎ウイルスはブタに感染している」とお伝えしましたが、日本全国にどのくらいのブタがウイルスに感染しているかを政府は毎年調査しています。少し古いですが2014年〜2016年のものをお示しします↓

色が濃いほどブタのウイルス感染率が高いのですが、この3年間を見るだけでも、西日本で色が濃くなっているのがご理解いただけると思います。
ちなみに、よく誤解されがちなのですが、「白塗り」の都道府県は「感染がない」のではなく、「検査をしていない」というだけですので、そこはぜひご理解ください。
そして次にお示しするのが最新の2024年版です。

ちょっとスクロールして見比べてください。
関東より西側で、明らかに色が濃くなっているのがわかると思います。
つまり、日本脳炎のウイルスは確実に身近に迫っているということなのです。
実際、2023年の日本脳炎の発生を見てみますと、千葉県、茨城県、静岡県、大阪府、熊本県から症例が報告されています。
大阪は、上の地図では「検査していない(白)」なので正確なデータはないのですが、患者さんが発生しているということは事実です。
先ほどの日本小児科学会の発表に戻りますが、結論として下記のように締め括っています。
「日本脳炎流行地域に渡航・滞在する小児、最近日本脳炎患者が発生した地域・ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6か月から日本脳炎ワクチンの接種を開始することが推奨されます」
ですので、大阪は比較的リスクの高いエリアに入っているため、今回ぐんぐんでは6ヶ月からの接種開始を推奨しようとなったわけです。
赤ちゃんの頃のワクチンスケジュールに組み込むことができれば、日本脳炎のうち忘れが防げます。これも前倒しのメリットと言えるかもしれませんね。
まとめ
日本脳炎はブタから蚊を経由して人に感染する病気です。
従来は感染したブタは四国や九州に多かったですが、近年そのラインが北上し、関東付近まで上がってきており、大阪は計測されていませんが、周囲の都道府県の状況を見ると、近くに居ると考える方が妥当でしょう。
実際に2023年には大阪府内でも日本脳炎患者さんが発生しています。
これまで3歳が標準接種時期とされてきましたが、3歳まで待つ意味合いはあまりなく、早期に接種した方が3歳未満のお子様を守ってあげられることになります。
そのような経緯でぐんぐんでは生後6ヶ月から接種を推奨することにしたわけです。
ご理解いただけると幸いです。