新生児のRSV感染を妊娠中のワクチンで予防!

コドモの病気と治療

今日は小児医療にとって良いニュースが入ってきました。

最近、インフルエンザや新型コロナウイルスがややピークを超えて減ってきましたが、代わりに増えてきたのが咳が強く&長引くウイルス感染です。

代表選手はRSウイルスやヒトメタニューモウイルス、それにパラインフルエンザウイルスなどです。

最も有名なのはRSウイルスで、赤ちゃんが感染すると重症化するもあります。

今回、そんな赤ちゃんのRSウイルス感染に強力な対抗策ができました!

それが、、、

ママにワクチンをして、新生児を守る

という作戦。

なぜそんな回りくどいことをするのでしょう?

今日はそんなところを解説してみたいと思います。

RSウイルスから守るべきは3ヶ月未満の乳児

RSウイルスというのは、少し大きなお子さんにとっては、「かぜ症候群」を起こすウイルスの1つなんですが、小さな赤ちゃんがRSウイルスに感染すると、風邪でおさまらず、気管支炎や細気管支炎という重症感染に進行していくケースが増えます。

特に1ヶ月未満の新生児や、心臓や呼吸器に基礎疾患を持っている赤ちゃんに感染すると呼吸状態が急激に悪くいなって命に関わる状態にまで至ることがあります😱

これまでの予防策

実はこれまでもRSVから新生児を守る方法はありました。

それは、シナジス®️というRSVに対する抗体薬です。(一般名:パリビズマブ)

これはマウスに作らせた抗体を集めて作るお薬なのですが、非常に高価な薬であったため、重度な心臓病を持った新生児など、ごく限られた赤ちゃんにしか使用できなかったのです。

普通に赤ちゃんにワクチンしたら効かないの?

赤ちゃん、特に新生児は免疫反応が弱いため、ワクチンをしても抗体ができにくいのです。

肺炎球菌やヒブワクチンは2ヶ月から始めるのですが、それでもなかなか抗体ができにくいので、何度も同じワクチンを繰り返し接種するんです。

RSウイルスから守ってあげたいのは、生まれて間もなく〜3ヶ月くらいの赤ちゃんなので、赤ちゃんへのワクチンでは追いつかないのです。

妊婦さんにワクチンすることでお腹の赤ちゃんに抗体をプレゼント

妊婦さんからお腹の赤ちゃんに抗体が移行することは随分昔からわかっていました。

生後しばらくは赤ちゃんは風邪をひきにくいのですが、その1つの理由がこの「移行抗体」というものなのです。

麻疹や水痘などの終生免疫もそうですし、インフルエンザワクチンなどでも移行抗体があることがわかっています。

その仕組みを利用して、妊娠後期の28〜36週に母体にワクチンを接種して、生まれてくる時には移行抗体で守られるようにするのが今回のワクチンなんです。

厚労省がこのワクチンを今年1月27日に承認

で、このワクチン、去年から海外では話題になっていたのですが、日本でも発売されることが決定しました↓

RSウイルスの母子免疫ワクチン、国内初の製造販売承認を取得
2024年1月18日、組み換えRSウイルスワクチン「アブリスボ筋注用」が国内製造販売承認を取得した。本剤は母子免疫を利用したワクチンであり、妊婦に接種することで、子の出生時から乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患を予防する。発売時...

発売開始は今年6月を予定されているとのこと。

当面は自費(任意)での接種ということになると思いますが、子育て支援としてぜひ無料になって欲しいものです。

まとめ

私たち小児科医が扱う感染症の中では、RSウイルスはずっとワクチンがなく、感染してしまった赤ちゃんを何とか必死に治療するしかなかったのですが、このワクチンが普及することで不幸な顛末をたどる赤ちゃんが減ることが多いに期待されます。

子どもに優しい社会に一歩近づきますね👍

今日も読んでくれてありがとう☺️

ではまた明日もお会いしましょう👋

おまけ:本日の日替わり動画

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