今日、クリニックの診察で久しぶりに「あるケース」を見ました。
その子のママは「7ヶ月だけど、お座りがグラグラなんです〜😭」と悩んでおられました。
あ、久しぶりに来た!と思い、聞いてみました。
ケイジ「あ、家でバンボチェア使ってない?」
ママ「え!!なんでわかったんですか?」
今日はこの現象について解説してみたいと思います。
バンボチェアとは
子育て中のママ・パパであれば大体みなさんご存知ですよね。
こんなやつ↓
(写真:Bumboホームページ)
我が家でも使っていたことがあるのですが、うまく使えば非常に良い製品です。
赤ちゃんの体にフィットするように作られているので、座らされた赤ちゃんも快適そうで「まんざらでもない」表情を浮かべます。
ま、つまりは赤ちゃんにとって「とても楽な姿勢」なんですね。
楽、というのはとても良いように感じますが、発達段階の赤ちゃんにとっては、そうとも限らないのです。
赤ちゃんの運動発達の原動力
赤ちゃんの原動力は「好奇心のみ」と言っても過言ではありません。
「あれなんだろう?」
「触ってみたい」
「掴んでみたい」
「舐めてみたい」
そんな好奇心で、手を伸ばし、届かなければ寝返ってみる。
それでも届かなければ足を蹴ってハイハイする。
少し高いところに何か見つけたら椅子や机の足を持って体を起こしてみる(つかまり立ち)
ちょっと遠かったら伝い歩きしてみる。
こんな感じで、運動能力というのは発達していきます。
赤ちゃんのためにしているつもりが
育児相談を受けていると、時々ちょっと優しすぎるママ・パパに遭遇します。
おもちゃが欲しそうだったからとってあげた。
高いところのものが欲しそうだったからとってあげた。
何か伝えたそうだったので、先回りしてしてあげる。
一見優しい行動のようなんですが、赤ちゃんの発達にとっては時々裏目に出ることがあります。
「この子、ちゃんとした単語を喋らないんです」とおっしゃるケースでは、親が想像して先回りしちゃっているケースもあります。
例えば、子どもが「んご」と行ってリンゴを指さしていたとします。
親は「あ〜、リンゴが食べたいんだな」と想像して、リンゴを与えたとすると、赤ちゃんはその物体を「んご」と理解します。「んご」で伝わってしまうと、子どもはそれを以後修正しようとはなりません。
別のケースでは、ちょっと離れたところにあるオモチャを指さして泣いていたとします。
親が取ってあげたら、次に欲しいものが出た時には同じように指さして泣くわけです。
そう、こういうケースは子どもの発達を邪魔している可能性があるのです。
本来は、したいことや食べたいものがあれば、そっと見守ってあげることが大事なんですね。
バンボチェアの弊害
で、バンボチェアですよ。
このチェア、赤ちゃんにとってはとても快適な椅子です。
上の写真を見てもらうと、背中と両脇に城壁のように壁がついているし、両足の間に聳え立った突起があって、これが前に倒れるのも防いでくれます。で、少し目線が高くなるので、赤ちゃんは座らされると非常にご機嫌で過ごしてくれます。
でも、本来は座るということは非常に大きな労力を伴います。
頭という重たい物体が上の方にあって不安定だし、前に倒れかけたら背筋に力を入れないといけないし、後ろに倒れそうになったら腹筋に力を入れて手を前に出さないといけないのです。
こうやって筋力と神経をトレーニングしながら、「お座り」という姿勢を学んでいくんですね。
バンボを無闇矢鱈に使ってしまうと、このトレーニングの機会を奪ってしまいます。
絶対しないで欲しい使い方
それは、バンボに座らせて、テレビや動画を見せっぱなしにするということ。
これね、親的には麻薬です。
親だって、自分の時間は欲しいし、自分の時間じゃなくても、家事や在宅ワークで赤ちゃんにじっとしておいて欲しい時もあります。
そんなときに、バンボとスマホを使ったりすると、親子共に穏やかに過ごせるので、すごく重宝しちゃうんです。
もちろん、時々は良いのですが、そのうち「この方が子どもの機嫌がいいから」と習慣化しちゃうんですね。
そうするとお座りやハイハイ、つかまり立ちなど腰からしたの筋肉を使用する運動が明らかに遅れてしまいます。絶対にやめましょう。
バンボチェアの上手な使い方
バンボの弊害ばかり並べてしまいましたが、運動発達という面から見ると悪でしかないのですが、何もバンボチェアの不買運動をしようというつもりはありません。
家庭生活・社会生活をしていく上では、うまく使えば良い製品であることも事実です。
実際に使用していた立場で考えると、離乳食を与える時などには非常に良いと思います。
座り方が安定すると、親も子も食事に集中することができます。これは良いと思います。
あとは、外食の際などに車に積んでいくと非常に便利です。
製品自体は非常に安定した形をしているので、ソファー席や畳席などフラットなスペースにおけば、安心して座らせておけます。
子ども椅子を用意してくれているお店もありますが、基本的には自分で座れる年齢(月齢)以上の子しか座らせられません。1歳までの赤ちゃんであれば、バンボの方が安定します。
まとめ
いかがでしたか?
便利なものを作るというのは人類の得意技ですが、時に便利なものは人間の能力を奪ってしまいます。
自転車や自動車など交通手段が発達すると人は歩かなくなって脚力が落ちます。
携帯電話が普及して、親戚の家の電話番号すら覚えなくなってしまいました。なんなら家族の電話番号さえも覚えていない方も多いのではないんでしょうか。
でもだからと言って、すべて悪というわけではありません。
要は目的と使い方次第です。
赤ちゃんがすることは全てこれトレーニングです。
赤ちゃんの発達で大事なことは、手をだすことではなく、ちゃんと見守ること。
楽をさせるのが優しさではないのです。
ご理解いただけると嬉しいです。
今日も読んでくれてありがとう☺️
ではまた明日もお会いしましょう👋
おまけ:日替わり動画
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