今日はちょっと珍しい病気の解説を。
少し前に新聞・ニュースを賑わせた「サル痘」というのを覚えているでしょうか?
実はこれ、ちょっと偏見や差別のもとになるということで、「エムポックス」と名称が変更されました。
今日は新名「エムポックス」がどんな病気なのか解説してみたいと思います。
どんな病気?
エムポックスのウイルス(Mpox virus)は、ポックスウイルス科のオルソポックスウイルス属(天然痘・牛痘と同じ属)に属する包まれた二本鎖DNAウイルスです。
ウイルスがなんらかの形で体内に入ると、5~21日の潜伏期を経て(大部分は6~13日)発症します。
発熱、激しい頭痛、リンパ節の腫れ、背中の痛み、筋肉痛、激しい無力症などの症状が0〜5日程度持続し、発熱1〜3日後に発疹が出現します。
皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮(かさぶた)となります。
病変の数は、数個から数千個までさまざまです。病変は、口腔内粘膜(患者の70%)、生殖器部(30%)、眼瞼結膜(20%)、並びに眼球結膜にも及びます。
通常、それたの症状は2〜4週間続いて、自然と消退していきます。
最近の致命率は3〜6%程度とされており、小児の方が重症化する傾向にあるようですが、その他にも重症化はウイルスの暴露量、患者の健康状態、合併症の重症度などとも関係します。
どうやって感染が広がるの?
主にアフリカに生息するリスなどの齧歯類(げっしるい)をはじめ、サル、ウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染し始めたと考えられています。
次第にヒトからヒトに感染するようになっており、主に接触感染と飛沫感染で感染が広がるとされていますが、主に大きな呼吸器飛沫によって起こると考えられており、大きな飛沫は通常数フィート以上移動できない(長時間空気中に浮遊できない)ため、長時間の対面接触がなければそう簡単には感染は成立しないようです。
一方、感染者の皮膚病変にはウイルスが存在しているため、直接の接触や最近汚染された物体との密接な接触により感染する可能性があります。
英国保健安全保障省は、英国内の省令の疫学調査においては、ゲイ・バイセクシャル・その他の男性間の性交渉を行う者での感染事例が多いことを指摘しています。(ただしその経路が全てではないので、無用な偏見や差別は避けなければなりません!)
エムポックスの歴史
人でのエムポックスは、1970年にコンゴ民主共和国(当時の国名はザイール)で9歳の少年から発見されたのが最初でした。
以後、患者の多くがコンゴ盆地からアフリカ西部、特にコンゴ民主共和国の僻地にある熱帯雨林地域から報告されました。
それ以後コンゴ民主共和国ではこの疾患が常在していると考えられています。(同国では1996-97年に大規模な集団発生が起こっています。)
2003年の春、エムポックス患者がアメリカ合衆国中央平原で発見されました。これは、アフリカ以外の大陸で発見された初めての患者でした。
患者の多くはペットにしていたプレーリードックと密に接触していました。
2005年、スーダン・ユニティ州で集団感染が起こりました。
2016年8月から10月にかけて、中央アフリカ共和国では、患者26人と死亡者2人によるエムポックスの集団感染が発生しました。
2022年5月19日に英国でナイジェリアから帰国後の患者がエムポックスと診断されたのを発端に、次々と感染者が報告されています。その多くは発端の患者と接点がなく流行地への渡航歴のない、男性同士で性交渉をされる方でした。
その後もスペインやポルトガル、カナダにおいても男性同士で性交渉を行う人の間で、確定患者または疑い例の集団発生(各20例前後)が報告されています。
さらにさらに、その後も全世界で感染はジワジワと広がり、アメリカ、スウェーデン、イタリア等でも確定患者が報告されています。
2023年5月2日現在、日本国内においては129例が探知されています。
日本での詳しい感染状況は?
症例はすべて男性であり、居住自治体別の探知数は東京都76例、千葉県6例、埼玉県7例、神奈川県12例、大阪府8例、沖縄県2例、静岡県3例であり、その他茨城県、高知県、徳島県、兵庫県、香川県がそれぞれ1例でした。
これまで探知された症例において、死亡例や重症例はないそうです。
症状については、無症状病原体保有者5名を除き、118例(95%)に発疹がみられ、発熱が96例(77%)でみられています。
海外渡航歴のない症例が125例(97%)であり、特に2022年38週以降は海外渡航歴のない症例が主体である
どうやって診断するの?
症状や発生地域への渡航歴、ペットの飼育歴(海外からの輸入)、性交渉歴などを確認し、エムポックスを疑った場合、主に水疱や膿疱の内容液や蓋、あるいは組織を用いてPCR検査で遺伝子を検出することが有用です。
他にも下記のような様々な検査法がありますが、高度な検査施設でしか検査できません。
- 酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)
- 抗原検出検査
- 細胞培養によるウイルス分離
考えるべき鑑別診断には、天然痘、水痘、麻しん、細菌性皮膚感染症、疥癬、梅毒および薬物関連性アレルギーなどの皮膚病変があります。
治療・予防は?
エムポックスの感染に対する特別な治療法・ワクチンはありませんが、天然痘と同じ属のウイルスであるため、天然痘治療薬や天然痘ワクチンが使用されることがあります。
天然痘用の治療薬として開発されたtecovirimatというお薬が2022年に欧州医薬品庁(EMA)によってエムポッックスへの使用が認可されました。しかしながら一般的に入手できる段階にはありません。
天然痘ワクチンがエムポックスに対しても85%の発症予防効果があるとされています。
しかし、天然痘は地球上からの撲滅されたことでワクチン接種が中断されたので、現在は天然痘ワクチンは一般的に入手困難です。(発生国ではすでに入手・製造に動いているという報道もあります)
まとめ
いかがでしたか?ちょっと難しかったかもしれませんね😅
今のところ、子どもがそれほど心配する状況ではないようですね。
でも、話題の感染症として知っておくことは大切です👍
今日も読んでくれてありがとう☺️
明日もまたお会いしましょう👋
おまけ①:本日の「日替わり切り抜き動画」
おまけ②:YouTubeライブ「なんでも相談室(60)」
今回の相談内容
- 0:00 雑談
◯インスタグラムから
- 5:03 5歳息子。環境アレルギー。薬を飲むしか方法ないですか?
- 7:21 熱の高さと本人のしんどさが比例しないのは何故?
- 11:23 鼻水で耳鼻科へ。小児科医は気を悪くしますか?
- 13:59 5カ月の娘。BCGの跡が全くできていません。不発?
- 15:53 6日前に娘が胃腸炎発症。いつまで家族感染リスクはある?
- 17:51 インフルや風邪でもコロナのような後遺症はありえますか?
- 23:27 生後4カ月で便秘気味。離乳食が始まったらもっと酷くなる?
- 26:56 3才児、ポカリを飲みたがり、やめさせることができません。
- 31:22 子供のイヤイヤ期はどう対応しましたか?
- 34:29 鼻水「ドロドロ」「ネバネバ」どう表現する?
- 38:31 超活発な2歳息子。お腹の上に思い切りダイブ。やめてほしい。
- 41:05 修正月齡1ヶ月の赤ちゃん。吐き戻しが毎回すごい量。
◯Youtubeから
- 46:04 子宮頸がんワクチン。シルガードの方が副作用も大きくなる?
- 49:36 耳鼻咽喉科受診報告書は小児科でも書いてくれる?
- 52:06 2歳娘は高熱が出るとほぼ100%夜中に嘔吐。小さい子あるある?
- 54:11 痔瘻と便秘の心配で受診。大丈夫と言われ安心できました。
- 54:52 6歳男子、今38.4℃と空咳。ただの風邪でも高熱はありえる?
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